『マッスルAIR』 第二章 〜〜キャミOH!味煤(きゃみお みすす)登場!〜〜


気がつくと、堤防の上に寝ていた。
背中をじりじりとコンクリートが焼き付けている。
どうやって天空から舞い戻れたかはツッコミなし。

「OH!やっとおきたみたい」

誰だ、俺の肉体をいじるのは・・・・・

「この人寝てる振りしてる」
「OH!そうだ、良いこと考えましたデス☆」

「これは神様が私へおくったプレゼントに違いないっ!」

さっきからしきりに俺の肉体をつついたりつねったりしていた声の主は立ち上がった。
そして俺をびしぃっ!!と某弁護士もびっくりないきおいで指差し、

「・・・ってことで、貴様は今の瞬間をもって我が舎弟とする!決定確定万々歳!!!NIHAHAHA〜!!!」

(さっきと口調違うー!!!!)
相手が立ち上がったことで、逆光で顔までは見えないが、だいたいの姿を見ることができた。

長い髪。
リボン。
高校・・・だろうか?女子用の制服。
手に持っているパックのジュースには『にゅるり悶絶濃厚ちくわすりおろしラベンダー風味』と書いてある。どんな飲み物だか想像不可。

最初で最大の過ち・キャミOH登場。

そして・・・・強烈なまでに膨れ上がった大腿三頭筋。

(なんですとーーー!!!???)

「くくく・・・仲良くしようね☆ ・・・じゅるり」

(星マークをつけるな〜!!よだれたらすな〜!!!)
俺の中でアラートが鳴り響く。危険。危険。危険・・・・
こんな奴と仲良くしたら色んな意味で終わりだ!!!!
(逃げなければ、たぶん一生後悔する!!!)
即決し、俺は逃げるために体に力をいれる。
なんとか動く程度まで回復したらしい・・・いける!!!

「まずはお楽しみの『ドキドキ☆脱衣トランプ神経衰弱編』からだな!ああぁ〜!考えただけでも後背筋が震えるぜぇ!!
 NIHAHAHAHA〜!!」
「誰がやるものか〜!!!!!!」

すばやく立ち上がり、ダッシュ!!!!俺は風になった!!!
走る!!走る!!走る!!!!
人の限界を超えた俺はあたりにソニックウェーブを撒き散らしながら疾走した!!!
(ここまでくればあいつも・・・)

「さて!でわ我が家へ直行じゃぁ〜!!!」

隣にいた。

「何でここにいる〜!!!???」
「NIHAHA〜!貴様の気を感じればあとは瞬間移動で一発じゃい!!!」
「使うな!!!!お前何者だ〜!!??」
「よくぞ聞いてくれた!!わが名はキャミOH! 味煤!(キャミオウみすす) 今をときめく女子高生じゃい!!!」
「嘘だ〜!!!!どうみても究極系のボディビルダーじゃないか〜!!!ってか男だ〜!!」
「くふふぅ〜。照れおって・・・☆ して、貴様の名は!?」
「覚えておけ!オレは国山奇 人主人(くにさんきひとぬしと)だ!そして忘れろ!!じゃぁな!!もう二度と会う事はあるまい!!」
「照れるなってぇ〜じゅるり☆ シャイな男の子だぁ〜い好きじゃ☆」
「誰か助けてくれ〜!!!!変態が、ムキムキの変態がぁ〜〜!!!!」

 ずどむッ!!!!!

「あぶふっ!」

いきなり放たれたボディブローに意識が一瞬にして吹き飛ぶ。

「お楽しみはこれからじゃい・・・NIHAHAHAHA〜!!!!」

薄れる意識の中で聞こえる絶望的な声をキャミOH!の肩に担がれながら、俺はひとつのことを考えていた・・・

(・・・・人形・・・・・)

意識、ダークアウト。




俺は今キャミOHの家でテレビを見ている。
(いつの間にか順応してしまった・・・)
外界から流れてくる涼しい夏の風を受けながら、畳の上で横になっている。
風鈴の音が心地よい。
キャミOHはというと、隣の部屋で掃除をしている。


ふと気がつくとテレビではなにやら座談会が繰り広げられている。
「お代官様これを・・・。下をご覧ください」
「・・・おお!これは・・・!越後屋、お主も悪よのう!」
「いえいえお代官様こそ・・・げははは!」
「ぐはははは!」

「ふはははは!」

一応俺も笑っておく。
そして物語は時間とともにクライマックスへと進んでゆく。
取り立ててすることもないので、そのままテレビを黙って見ておく。
物語はおもむろに戦闘シーンに入ってゆく。
「野郎ども!やっちまえぃ!!」
「うおあああああ!!」

 カキンッ

「せやあ!」

 ズブシャ

「うおあああ!!」

 キキンッ ズシャッ

「うむ、今回のファイトはちとデンジャーじゃのう!」
「ご隠居様、これをお使いください!」
「スケさん、この杖はなんじゃ?」
「は、これは江戸に昔から受け継がれてきた伝説の杖であります!」
「ほう・・・ むん!!」

 バキッ

「うがあああ!!」
「ほほ、イッツァグレート!!素晴らしい威力じゃ!!スケさんでかしたぞ!」
「ご隠居様も見事でございます!」
「ふん!は!ぬはははは!!!もはやわしに敵はいない!!力が溢れてくるぞ!!!ふはは、ふはははは!!!」 
「ご隠居様お気をつけください!その杖は装備者のMPを吸い取ります!!」
「なんじゃと?・・・ふぐっ!!」
「!! 大丈夫ですか!?」
「シィット・・・魔力が尽きたようじゃ・・・」
「く、今しかありませんな・・・控え控えぃ!!!この紋所が―――」
「あまい、そうはさせんわぁぁ!!ブラッディースクライドォーーー!!!!」

 ズギャアアア・・・

「なんてことだ!印籠が粉々に・・・っ!」
「物的証拠がなくなればもはやこっちのもの!!くたばれいぃ!!」
「おのれええ!!!カクさん!あれをやるぞ!!」
「よしきた、スケさん!!」
「・・・・我らのこの手が光って唸るぅうーー!!!」
「悪を倒せとぉ!!轟き叫ぶぅ!!!」
「流派・KOUMONが最終奥義!!」
「必殺!!!シャァァイニング・ミト・フィンガーーー!!」
「きゅうぅぅぅぅきょく!!!」
「石破!天きょぉぉぉけん!!!」
「逝っちゃって!こうもんさまーーーー!!!!」
「わしを投げるなぁっ!!!ふおおおおおぉぉぉぉ!!!!(黄門様の叫び)」

 ギャルルルルル!!

「なにぃ!!!黄門様に高速スピンをかけて投げただとおぉぉ!!!」
「超電磁スピン!?」
「説明ご苦労!!!時代錯誤!!」

 ちゅどーーーーーん!!!

「ふおおあああああ!!!」

 ゴゴゴゴゴ・・・・・・

「終わったなスケさん・・・」
「ああ、熾烈な戦いだった・・・!」
「しかし、犠牲は大きい・・・黄門様が・・・!」
「仕方がないさ、これが最終奥義たる所以なんだから・・・」
「黄門様!あなたの最後の輝き、しかと見届けました!! ・・・・・・・ぐふ!?」
 
 ズシュゥ

「何をするんだ、スケさん・・・!?」
「お前も消えれば俺が主役さ!!」
「お・・・おまえ・・・」
「せめてものはなむけだ・・・俺の必殺技で死ね!」
「な、なんだと・・・!」
「ひっさぁぁつ!!!バラの舞!!!」

 ブワァァ

「コンボ1ゲージ剣の舞!
 フィニッシュ3ゲージ白鳥の舞・・・!!」

 ヒュオオオオオォォォ・・・ザンッ!!!

「う、美しい・・・。野郎にもかかわらずなんてしなやかな動き!まるで優雅に舞う女性のよう・・・!
 激しく!それでいて無駄な動きがない・・・!ああ!!我が人生に一片の喰いなし!!!!!!
 ぶらぼおぉぉぉーーーーーーーーーーー!!!!!」

 ちゅどーーーん!!

「カクさんよ、最期まで漢だったな。
 ・・・。
 これにて一件落着!ふはははははは!!!!」

 はたして本当に黄門様は死んでしまったのであろうか・・・?
 次回からの主人公はスケさんなのか・・・?
 水戸黄門と愉快な仲間たち・・・
 まさに今、くらいまっくすを迎えたといえよう!

「さぁぁて!来週の黄門様は〜♪」
「ばぶばぶばぁ!!ぶぶぶばぶばぶ!ちゃーーーん!!ぶぶぅ〜!はぁーーい、ばぶぅ!」
「 “水戸黄門様、電撃復活”
  “スケさんとカクさんはできていた・・・!?”
  “愛と感動の徳川埋蔵金!”
 の三本で〜す!また見てね〜♪じゃ〜んけ〜んぽん!
 グフフフフ!」


・・・ある意味面白い!
なんて事だ!とてもすごく来週も見たい!!!
世の中にこんな時代劇があったなんて・・!
江戸時代なのに黄門様の何気ない横文字が良い。

ふぅ・・・。
久々に満足したな。
窓の外の景色は赤く色づいている。いつの間にか夕方になったようだ。
夏の日中は長い。
これから何をしようか?

キャミOHは台所で食事の支度をしている。
腹が減っているので逃げ出そうにも力が出ない。むしろ何か食わせろ。
ここはおとなしく飯を待つことにする。

「ハア、ハア、オイサンイタクシジャーカラ・・・」

しばし扇風機で遊ぶ。顔を近づけて喋る。

「YHAAAAAA!俺の相棒はクールで小粋な扇風機ィィ!!!」

・・・相棒?
そうだ。人形を探さないと。
俺は玄関に向かったが・・・

「ファントムレイザーあるよ〜、NIHAHAHAHA〜!!!!」

ファントムレイザー・・・、見えない刃である。
ちなみに、ピロロがいればいくらでも補充できる。

「・・・うかつに行動できないか・・・」

明日を待つことにする。
・・・一眠りしよう。テレビを見ると微妙に疲れるからな。
今日はいろいろあったな・・・最悪なことばかりが。
運転手に犯されかけたし、漢は追ってくるし、子供は強いし、キャミOHだし。
・・・まあいい。
今までの長い独り旅に比べれば今日のちっぽけな時間の出来事など・・・。
今までもこれからも独りだ。

空にいる少女。
先のない旅。
俺はこれからどこに向かっていくのだろう・・・?
破滅・・・?それとも・・・
そして意識はおちてゆく。


が、
「ブレストファイヤー−!!!」
「!?」

当然の叫び声に目を覚ます。しかし変わったことは何もない。
キャミOHは相変わらず夕ご飯を作っている。
「・・・まだだ!まだ足りん!!もっと出ろぉぉぉ!!!ふん!はっ!!!ぬうぅぅぅぉうっ!!」
何をやっているんだ?
すごく気にはなったが、ファントムレイザーの餌食にはなりたくないので大人しくする。
まいったな、うかつに動けない・・・
眠気もすでに覚めてしまった。
できることは・・・テレビを見ることしかない。
再びテレビをつける。

「さぁぁぁ!!!陽気なやつが帰って来たぜぇぇ!!!ミスター−半裸ァァァ!!!!!」

 バササッ

「おぉっと!!?これはミスターの服だぁ! ということは・・・いきなり全裸かぁぁ!!!!」

 うおーーーーーー!!!(観衆)

「ならば見せていただきましょう!!!ミスター−−半裸!華麗に推参ーーー!!!」

 ポチッ

チャンネルをまわす。
野郎の裸には興味がない。
適当にチャンネルをかえる。

「どうだぁ!!半裸ビームの威力はぁ!!」
「ハイパーメガビーム半裸ランチャー!!」
「うああ!!!俺の服がああ!!」

 バシュウッ!

「アムロォッ!貴様も半裸になれえ!!」
「シャア、情けないやつ!!」

・・・あまりの衝撃的なシーンに我を忘れてしまった。
チャンネルを変える。

「おっス!!オラ半裸!いっちょ脱いでみっか!!」

 ポチッ

おかしい?なぜにみんな半裸?

「そのビデオ、俺が特別編集したのだ、NIHAHAHAHA!!」

すぐに答えは導かれた。
しかしビデオならチャンネルを変えることは出来ないはず・・・?

「それ最新型のビデオデッキだ!いっぺんに10個のビデオテープを再生できるぞ、NIHAHAHAHA!!」

・・・・・・。
それってこれといって意味がない機能なんじゃないか?
それと間違えてビデオのリモコンを使っていたようだ。
テレビのリモコンらしきものでチャンネルを入れる。

「いったいあと何回わいせつ物陳列罪を犯せば気が済むんだぁーーー!!!」
「ふふふ、ボクは根っからの露出狂なのさ・・・! 君もあの地球人のように半裸にしてあげる・・・☆」
「あの地球人のように・・・ クリリンのことか・・・クリリンのことかあぁぁぁーーーー!!!!!」

・・・・・・・。俺は目の前のとんでもないモノのため、動けなかった。

「ああ、それは今再放送中のドラゴンボールZ(ポロリあり)だぞ!!
 ちゃんと録画してあるから安心しろ!!NIHAHAHAHA!!」

・・・。
寝よう。
それが今の状況で最善の選択肢であろう。
おやすみ。
・・・
・・

「ご飯できたぞぉぉぉ!!!!」

・・・睡眠終了。
とりあえず無事に食事できることを祈ろう・・・。


夕食後、(いきなり展開早いな!)
久しぶりの満足感に満たされながら俺は居間で横になった。
そして食後の一眠り・・・
・・・
・・


低い唸り声が地響きと共に聞こえてくる。
それは明らかに日常からかけ離れた音だった。

 キュラキュラキュラキュラ・・・

きゅらきゅら?
徐々に音は大きくなり、やがて・・・

 ちゅどーーーーーん!!!

「おわぁっ!!?」

俺は飛び起きる。
この家の隣で何かが爆発した!

「親父が帰ってきたか、NIHAHAHAHA」

どうやら親が帰ってきたらしい。
本当は身内の人が帰ってくる前にこの家から逃げ出したかったんだが・・・
それよりも今は爆発音が気になる。

 ズン!ズン!ズン!

キャミOHは玄関に歩いていった。

「おかえりぃ!親父また隣の家を狙撃しただろ?」
「屋根が一気に大破しおったでぇ!!UHAHAHAHA!!」
「NIHAHAHAHA!!」

とんでもない内容をさらりと言う。

「ところで、今友達が来ているんだが」
「なにぃ!男か!?」

速攻聞くことがそれか!?

「その通り、じゅるり☆」
「じゅるり☆」
「ご飯食べさせたから、いつでも準備おっけぃぃ!!!」
「でかした!!!ぬははは!!!」
「フォワグラ食うならまず太らせろ!!NIHAHAHAHA!!」
「明日は寝不足やなあ!!!UHAHAHAHA!!」

俺は自分の血の気が引いていくのがよくわかった。
さっきまでのキャミOHの行動を見ている限りでは・・・そこのガラス戸にはファントムレイザーがない!!
躊躇することなく行動した。
飛び起き庭に駆け下り塀をよじ登り裏の路地へ身を翻す。
途中、ちらりと戦車が見えたが、もはやそれどころではない。

「・・・うおぁああ!!!はっっけーーーーん!!!」
「皆の衆!!集まれぇぇ!!!見つけたぁぁ!!見つけたぞぉぉぉ!!!逃がさんんんん!!!」

正面の十字の先にいくつかの筋肉の姿を確認する事が出来た。
すぐにその筋肉と逆の方向に逃げ出した。
おぞましい記憶だったのでよく覚えていた。
今のは昼間追っかけてきた漢達だ!!!
まだ、俺を探していたのか!?
夜の田舎道を疾走する。
いくら助けを求めても誰も出てきそうにないその住宅地の静けさに、俺は恐怖を感じた。
月の明かりで、視野は良好、夏といってもこの街の夜は幾分か涼しかった。
だがそれでも全力疾走するには苦しすぎる。

漢B「ぬぅぅぅンッ!!待たんかあああ!!!」
漢L「ふんふんふん!!」
漢R「ふはぁ!!絶対に捕まえてやるぞぉ!!」
漢P「捕まえたら・・・捕まえたら・・・ハア、ハア・・・あんなことやこんなことをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!!!!!」

今の言葉で俺の速度は1.5倍まで上がった。
2倍まで引き上げると脚が耐え切れなくなる。

漢達「ふっ、ふっ、ふっ、はああああっ!!」

目の前に別の筋肉の人影がある。

「ぬぅぅぅん!!!待ち伏せじゃあ!!・・・・・・げぼばぁ!!!」

渾身の飛び膝蹴り。
今ほど人を殺すのに躊躇いがなかったことはない・・・!

・・・
・・・

もうどれほど走っただろうか・・・?
俺は賭けに出た。
今入り組んだ住宅地を走っている。道は塀と塀に囲まれている。
そして次の曲がり角を曲がった瞬間!

 ザッ!!

俺はどこだかわからない家の塀を一気に飛び越え敷地内に潜りこんだ。
今の動作は漢達から見ると塀によって死角となり、隠れている俺に気づくことなく走り去っていった。


ふう・・・
安堵感が今俺を支配しているせいで体に力が入らない。
このままでは泥棒扱いされてしまうので、別の方向から速やかにこの家から抜け出すことにする。

「あ、こんなところにいた☆NIHAHAHA!」

・・・キャミOHの家?
目の前の景色が一気に闇に吸い込まれていった・・・。

「おお、動かんぞ?悶絶しているのか? まったくこんなところで・・・破廉恥な、NIHAHA」


俺は密かに死を覚悟した。

 

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